本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]

さて、先月の当[報告書]において、背脂ギトギトの通称・環七ラーメンを機に、プロペラ・ラーメンやらラガー麺など、インパクトなラーメン屋の話題で盛り上がった。
その後、さらに、さまざまな情報が寄せられて嬉しい限り。
と、いうことで、本日は特集を組み、インパクトなラーメン屋ばかりの殿堂をここに築こうと思う。
その名も、「ラーメン爆物館」、略して、「ラー爆」。
これまでに、当欄で紹介した店はすべて「ラー爆」の殿堂入りとさせていただく。
味であれ、雰囲気であり、店員であれ、客であれ、店の状況であれ、それら、どれかが良くも悪くもインパクト大な店であることが、殿堂入りの条件である。
では、新たに、「ラー爆」入りした店をここに紹介しよう。
先ずは俺から。
俺の世界一、好きなラーメン屋は町内にある「***」、混むと嫌なので名前は伏せる。
美味さが俺のど真ん中のツボ。ファンも多い。
昨年の年末、或る客がモヤシラーメンとタンメンといっぺんに注文した。
一人で、二つの丼を前にして、ひたすら、貪り食っていた。
いくら好きだからって・・・。
と思ったが、まるで、最後の晩餐を思わせる、思いつめた顔で食っている。
そうか、何かワケあって年を越せないのだなー。
人生最期の一食に、大好きな「***」を訪れたけど、最期にどっちか撰び切れず、未練が残らぬように、モヤシラーメンとタンメンと両方食っていたのだ、と推察する。
南無三。
しつこいようだが、この店のラーメンはホントに美味い。
なのに、ある日、隣席の客はひたすら酢を注いで食っていた。
親の仇でもとるように、何度も何度も・・・。
俺、怒りを抑えるのに必死だった。こいつこそ仇と思ったね。
「ミステリファンのための古書店ガイド」などの著書で知られる評論家の野村宏平さんから聞いた話。
神田神保町のとあるラーメン屋。
とにかく、脂がギトギト。
で、店主は客にコショウを沢山ふり掛けるよう促す。
野村さん、そのアドバイスに従う。かなり、ふりかけた。
けれでも、店主は、
「それっぽっちじゃ、足りないよ。うちのラーメン、食えないよ。もっと、もっと、表面が隠れるくらいかけなきゃ」
どういう味を追求してるのか。普通、逆だろ。かけすぎると怒るものだろ。
野村さん、「確かに、コショーがなきゃ、食えたもんじゃなかった」だって。
香辛料を求めて発展した中世ヨーロッパの貿易史みたいな店だ。
さて、まだまだ、殿堂入りの店はある。
本日、一回では紹介し切れそうもない。
なので、二回に分けて、明日、後編をお送りするとしよう。
では、前編の本日、トリを務めていただくのは次の方。
「福家警部補の挨拶」(東京創元社)ヒット中のミステリ作家・大倉崇裕さんから、ご寄稿いただいた。
ご多忙の折でしょうに、感謝感謝、深く御礼申し上げます。
では、まいりましょう。大倉さんのインパクト・ラーメン。
大倉です。
ラーメンで盛り上がってますね。
私もラーメンが好きでよく行きます。
私の場合、不味いラーメン屋を探すのが趣味でして、
これぞ! という雰囲気の店には必ず入ります。
ちなみに、私の収集する「不味いラーメン屋」の定義とは、
一、不味い
ニ、にもかかわらず繁盛している
の二つです。
東京駅八重洲はラーメン激選区なのだそうです。
ここには三つの殿堂入り不味いラーメン屋があります。
日本橋寄りにあるラーメン屋は、外観もいかめしく、いかにも本格派という感じなのですが、カウンターと厨房にいるのは、女子高生風のやる気なさそうな娘二人。
このミスマッチはラーメンの不味さとあいまってなかなかいけます。
「女子高生ラーメン」。
その向かいにあるつけ麺屋。
魚、豚、牛肉の旨味をブレンドした特製スープが売りです。
しかし、どう味わってみても、魚、豚、牛の臭みをブレンドしたとしか思えず、雑巾の味がします。
「雑巾ラーメン」
有楽町寄りにあるサッポロラーメン屋。
かってそこで食べていたとき、横に座った見知らぬ女性が私に体を密着させてきました。
すわっ、これが逆痴漢かと興奮しましたが、よくよく見ると、脇の壁を茶バネゴキブリが縦横無尽に走っておりました。
「ゴキブリラーメン」
以上。
大倉さん、本当にありがとうございました。
それにしても、日本の中心、東京駅地下でかようなラーメン屋が三連発とは、まさしくディープインパクト!
地方から上京した人がいきなり食って、これが大都会のグルメのスタンダードなのかと間違った物差しを故郷に持って帰る。そうした例が増えて、全国に伝播したら、飽食の時代に冷水を浴びせるようで愉快ですね。
大倉さん、また、気が向いたら、当HPに遊びに来てくださいませ。
そうそう、大倉さん御自身のHP「Muhoの日記」12/1、「007」特集で、「カジノ・ロワイヤル」のラストシーンについての推理、爆笑しました。
晩飯。ラーメン、ではない。
鶏肉とマメのシチューに、クスクスという中東のライスみたいなもの。家内は昔、ベイルートに暮らしていたので時々、こうした珍しいものを並べる。クスクス、初めてだけど素直に腹に収まり、美味いし、消化によさそうだ。
それでは、明日、「ラーメン爆物館」後編、お楽しみに。
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