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■ 11月30日(木)
November 30, 2006 5:17 PM


 ディクスン・カーが生誕して100年の日を迎えた。
大好きな「死者はよみがえる」「わらう後家」「爬虫類館の殺人」でも再読してみるとしようか。
お、マーク・トウェインも誕生日。
この重なりは嬉しい。両師匠の稚気の魅力は共通するところ、シンクロニシティを感じる。
ん、さらに、「悪魔に食われろ青尾蝿」のジョン・F・バーディンも。
何と言うか、因果な祝日って感じ、乾杯!!!


 映画「007/カジノ・ロワイヤル」公開のキャンペーンに、“ニュー”ボンド役のダニエル・クレイグが来日している。
この俳優、かなりイイ。
イアン・フレミングっていうよりも、ジョン・ル・カレの小説に出てきそうな雰囲気を漂わせている。
そう、フィクショナルに、それでいてリアルに、イメージするスパイってこんな感じだろうってマスクとたたずまい。
凄く有能なスパイなんだけど、名刺に「スパイ」と記されているので、バレちゃった、ってギャグをふと思い出した。
それくらい、スパイっぽい容姿だと思うのは俺だけだろうか?
映画の出来もすこぶるいいらしい。熱狂的な007ファンの間でも最高傑作と絶賛する声も聞こえてくる。
よっしゃ、これは観ておくか。
残り少ない今年は、これと、「木更津キャッツアイ」だな。


007シリーズには数多の強敵が登場したけど、俺のお気に入りは、「ゴールドフィンガー」のハロルド坂田。
プロレスラー出身でサンダー杉山みたいな樽系の体躯。
なのに、その肉体を大して武器としない。
必殺技は、帽子だ。普段から、あの体型なのに、東洋人顔なのに、シルクハットをかぶっていていかにも不自然。
そのシルクハットが手裏剣のような飛び道具になる。つばの部分が刃になっていて、相手を切断するのだ。
ボンド(S・コネリー)との決闘シーンは大人の漫画って感じで今、見ても心躍るし、笑える。
時限爆弾がすぐ近くにあって、ボンドがハロルド坂田を倒して、ようやくOFFにする。
爆発まで残り七秒だった。「007」とメーターに表示。たまらんのぉ。


もう一人、忘れられない宿敵は、「007/コ゜ールデンアイ」に登場した女性。
サディスティックな女殺し屋、ファムケ・ヤンセンが演じた、その名も、ゼニア・オナトップ。
ファムケで、オナトップ、とは凄い名前だと、かつて映画評論家の品川四郎が書いていた。
書いていたのは、ファムケ・ヤンセンが出演していたパニック映画、タコみたいな化け物が大暴れする「ザ・グリード」(もちろん、東宝東和!)の劇場用パンフの原稿。
これを依頼したのは実は、編集人だった頃の俺。
品川氏は、「ファムケでオナトップとは凄い」と記した上で、さらに、「80年代の深夜番組を騒がせたオナッターズを連想させる」と続ける。
オナッターズとは、三人のセクシーアイドル・ユニットで「恋のバッキン」という名曲を歌っていた。


品川氏のその素晴らしい原稿に俺は歓喜したのだが、東和サイドからイチャモンがついた。
下品すぎる、と。
俺は、「これほど知能の高い文章が解らんのか」と珍しく怒声で反駁したら、
東和サイドは、「この原稿を理解できない私どもは知能が低いかもしれませんが、でも、原稿の品位こそ低いと思う」と抜かしやがる。
あれこれ押し問答を続けた結果、クライアントは東和サイドという力関係上、俺は泣く泣く折れる。
品川氏に「スマン」の電話をしたら、「まあ、いいっすよ。予想はしてましたから」と確信犯の発言であった。
現在、流布されている「ザ・グリード」のパンフには、オナッターズに関わる数行は削除されている。


で、ファムケ・オナトップとボンドの決闘のハナシであったな。
二人は一度、ベッドインのシーンが描かれる。
でも、ボンドのことだから、その後、他の女ともバリバリに関係。
やがて、終盤、オナトップが敵と判明し、ボンドと決着をつける展開に。
彼女の得意技は、太腿で相手の首を挟み、締め付けるというもの。股の力が凄いのだ。
オナトップの名でここまでくると、もう、狙っているとしか思えなくなる。
そして、衰弱したボンドに銃を向けると
「さあ、今まで関係した女の中で、私がサイコーだったでしょ、そう書きなさい!」
と、無理矢理、遺書を書かせようと強要する。何ともサディスティックな、さすが、オナトップ姉さん。
ボンドは万年筆でノートに記すふりをして、その万年筆こそ、秘密兵器の・・・。
いやはや、いろんな意味で名決闘シーンであった。


 夜。「戎」北口店。名物のイワシコロッケでチュウハイを傾ける。
隣の常連さん、酔っ払いすぎて、自分が何をオーダーしたのか忘れて、店員に尋ねていた。



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