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■ 12月14日(木)
December 14, 2006 3:20 PM


 討ち入りじゃ、討ち入りじゃ、って12月14日。
うちはJ-COMに入ってるけど、時代劇専門チャンネル、この一両日、「忠臣蔵」だらけ。
大石内蔵助が、
長谷川一夫、阪東妻三郎、松本幸四郎、中村勘九郎・・・・・・歴代ジェームズ・ボンドか。
地上波のテレ朝じゃ、松平健も。


そうした顔ぶれの中で一際、目を引いたのが、
丹波哲郎センセーの大石内蔵助。
虚実ともども、さっそうと死地へ向かう覚悟が出来てるよな。
時代劇専門チャンネルでオンエアされた、
「忠臣蔵異聞 生きていた吉良上野介」。
あ、丹波さんが出演してるからって、吉良の亡霊のホラーじゃないよ、念の為。
まあ、それをちょいと期待して観てしまったのだけどね。


配役では、主演が川谷拓三。
この人も既に地上の人で無いね。
おそらく、八十年代の作品だと思う。一時間モノの特番だったらしい。
しかし、これが実に良く出来た作品だった。


討ち入りまで、あと10日と迫ったが、赤穂浪士のなかで誰も吉良の顔を知る者がいない。
屋敷に潜入して吉良の顔を確認せよ、と厳命を帯びた毛利小平太(川谷)だったが、失敗。
大石(丹波)にクソミソになじられ、罵倒される。「二度とわしの前に姿を見せるな」と。
討ち入りには参加できないことになる。
なるほど、実際、毛利の脱落は史実に裏付けられている。


失意のどん底に沈む毛利のもとを、大石が密かに訪れる。
そして真意を告げる。
「お前を罵倒したのは芝居だ。あそこまで追い詰めれば、お前が脱落しても、誰も不思議と思わない」
あれは策略だったのだ。
真の目的は別のところにあった。それは、
「吉良は当然、影武者を用意している。そして、吉良の顔を知る浪士はいない。
もしも、ホンモノの吉良の首を取り損ねた場合、第二の刺客が必要となる。
毛利よ、お前にそれを命じる」
おお、何とも、ミステリな展開ではないか。


12月14日、赤穂四十七士による討ち入りは成功した。
が、それは表向きのこと。
首は影武者のものだった。
タイトルにあるように、吉良は生きていた。
それを調査したのは、討ち入りの途中に抜けた寺坂吉衛門。
ここらへん史実の擦り合わせが上手い。
そして、毛利小平太は第二の刺客として覚悟を決めるのだった・・・。


吉良は米沢の上杉藩にかくまわれ、身の安全を確保した上で、己の生存を世間に知らしめようと画策していた。
武士の鏡とあがめられる赤穂浪士の評判を落としてやるために。
吉良が密かに米沢へと旅立つ朝、その道中、毛利は刺客となって行列に突っ込む。
籠の中の吉良を槍で射止め、また、同時に、護衛らの刀に、毛利も命を散らした。
折りしも、大石が切腹の日であった。
毛利の密命遂行を知り、
「わしとしたことが不覚にも、討ち入りの人数を間違えておった。
四十七人ではなく、正確には、四十八人であった」
白装束の大石はそう言って、穏やかな面持ちで、死の場に向かうのだった。


 実は俺、「忠臣蔵」オタクなんだけど、それこそ不覚にも、この作品の存在を知らなかった。
この作品のおかげで、例年になく、いい義士祭の日となった。
忠臣蔵オタクになったキッカケは、小学校の頃に見た連ドラ。
「大忠臣蔵」
三船敏郎の大石内蔵助、渡哲也の堀部安兵衛、おお、まさに「大忠臣蔵」。
こないだ、再放送で討ち入りのシーンを見たら、なんと、浪士の一人に、世界のニナガワ、
若き頃の俳優・蜷川幸雄までいたよ。
あ、この番組で思い出すことがいろいろあるけど、疲れてきたので、また明日。


 夜、「戎」北口店で一杯、ああ、まただよ。
あ、この店のことでも書きたいことがあるけど、それも、また、明日



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