酔狂に猛走する、ユーモア本格ミステリの傾き者、推理作家・霞流一の公式サイト、「探偵小説事務所」へようこそ!



■ 12月19日(火)
December 19, 2006 1:28 PM


 最近、見た映画(ビデオ、DVDにて)。
「殺しが静かにやってくる」
「続・夕陽のガンマン」
「キル・ビル」
「パガニーニ」
「荒野のドラゴン」
「007は二度死ぬ」
「亀は意外と速く泳ぐ」
「酔いどれ博士」
「東京流れ者」
「黄線地帯」
「人生劇場 飛車角と吉良常」


いずれも、新作長編の参考資料として自宅試写した次第。
バカミスの本格ミステリを書くには、いろいろと準備が必要なのだ。
しかし、いったい、どんなものを書こうとしているんだよ、おい、俺?
自分自身でも、解らなくなりそうだ・・・。


上記の映画、ほとんどが再見だったが、二本は初めて。
その一つ、「酔いどれ博士」は、勝新太郎が医者の役。
もう、それだけで恐いよ。
もしも、自分が交通事故で重傷を負い、気を失って病院に運ばれ、手術室で意識を取り戻し、
目の前で、メスを握っているのが勝新だったら・・・・・・。
まあ、そんなこと妄想して肝を冷やしたけど。
新藤兼人・脚本でなかなか見せる佳品であった。


もう一本の初見が、「荒野のドラゴン」。
これが、ややこしい。
あ、別にストーリーが複雑なわけじゃない。
これ、マカロニ・ウェスタンとカンフーアクションが合体した作品。
まあ、マカロニのブームが衰退し、入れ替わるように、ブルース・リーの出現で、カンフーものが猛威をふるい始めた頃のものである。
東洋の空手使いがガンマンを素手で倒す、想像通りのストーリー。
複雑だというのは、存在そのもの。


マカロニ(イタリア)製で、ウエスタン(アメリカ西部劇)で、カンフーアクション(中国)。
しかも、主役のカンフー使いは、香港(イギリス領)の俳優だけど、ホントは日本人。
そして、対する悪役の筆頭のガンマンは、あの、クラウス・キンスキー、ドイツ映画で活躍したポーランド人だ。
イタリア、アメリカ、中国、イギリス、日本、ドイツ、ポーランド、どうだい、この思いっきりグローバルなスケール!
けれども、画面から大作感は微塵とも伝わってこない。
それはそれで、一つの世界観、つまり異界を構築していると無理矢理とらえてしまおう、かなり無理矢理だな。
だからといって、退屈なわけではない。
いや、むしろ、かなり夢中になって見ていたよ、そのチープさも楽しみながら。
足を撃たれて立てなくなったカンフー使いが、なんと、逆立ちして戦うなんて、思いついても、実際に映画にするもんじゃないよ、それだけで、得した気分。


そして、何よりも、クラウス・キンスキー様。
「皮はぎジャック」、って殺し屋の役。
その名の通り、対決する敵の皮膚をナイフではぎとるんだ。
しかも、必ず、生きている状態ではぐ。そうしないと気がすまない。
実に、キンスキー様のためだけに考えられたような役だ。
いや、御自身が思いついたのかもしれない。
コートを広げると、内側に、さまざまな形状の刃物が仕込まれている。
「夕陽のガンマン」がヒントだろう。リー・バン・クリーフが馬の毛布を広げると、ライフルやピストルがぞろぞろって出てくる、あのシーン。
うん、キンスキー様、あの映画にご出演されていたものな。


この御方、「夕陽のガンマン」「殺しが静かにやってくる」など、片っ端からマカロニに出演しまくっている。
俺がマカロニ見る70パーセントの理由は、このキンスキー様を拝みたいからである。
ちなみに、上記の「パガニーニ」はキンスキー様の監督作品。
マカロニではない。
バイオリニストのパガニーニの伝記映画で、キンスキー様が自ら扮していて、まるでホラーだった。
演出は、どこか、北野武を髣髴とさせる。
バイオリンの形を女体のメタファーと考えているのか、やたらと、キンスキー様がヤりまくっている。
単に監督の権限を濫用していただけなのか。
なんであれ、キンスキー様の御尊顔を御勇姿をたっぷり見れるので、ファン(信者?)にはたまらない。


そういえば、俺、勤め人の頃、映画記者たちを連れて、イタリアへ行く途中、ロンドンの空港でキンスキーを見たんだよな。
キンスキーといっても、娘の方、ナスターシャ・キンスキー。
八十年代で、その美麗さを誇っていた頃だ。
映画記者たちは嬉々として話しかけ、一緒に写真を撮ったりしていた。
ナスターシャは機嫌よく彼らの相手してたっけ。
でも、俺が一生懸命に探していたのは、その父の姿だった。
クラウス・キンスキー様もご一緒かもしれん、と。
残念ながら、いなかったよ。
娘の顔を見て、重ね合わせるだけだった。


 夜は「戎」北口店で一杯。モツ煮込みに大ぶりの大根が入っていて、冷えた体に沁みる。
珍しく、燗をつけてもらった。
ここ数年、めっきり弱くなっているので、外じゃ日本酒飲まないんだけど、よほど寒かったんだね。
あ、レギュラー席の常連(毎日)さん、湯豆腐の鍋に、焼き鳥二本、串から外して入れてるよ。鳥の水炊きだ。
以前、当欄で記したように、生の焼き鳥でコレやるのはご法度になったけど、そうか、ちゃんと焼いた焼き鳥で、勝手に湯豆腐に入れるのは、まあ、客の自由であるわな。うん、理屈は通ってる。
やるな、さすが、レギュラー常連はしぶとい。



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