本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]

ああ、時代劇専門チャンネル、昼から、一時間、集中して見ちまったよ。
家内も同様。
映画「大奥」の初日舞台挨拶の模様が生中継されてたんだ。
俺も家内も、東宝勤務時代に、宣伝部にいたことがある。
初日や完成披露試写会など、その手のイベントは、もう、無数に参加したり、仕切ったりした。
なので、オンエアを見ていると、苦労が手に取るように解る。
舞台での俳優の並び、挨拶の順、時間配分、スチール撮りの絵作り、マスコミからのリクエストの対応、観客への配慮と注意、控え室の確保、芸能プロダクションのスタッフとの交渉、俳優の劇場の出入り、その経路、時間帯、祝賀会会場への移動の方法、etc。
これら煩雑な仕事をスムーズに遂行するために、莫大なエネルギーを注ぎ、カツオ節のように神経をすり減らすのである。
さながら、戦争映画のミッションのようだ。
だから、「大奥」初日の生中継、見ていて、手に汗にぎる。
生半可なサスペンスものやアクション映画よりもスリリングなのである。
「あ、役者の並び、そう来たか」
「うん、これなら、プロダクションから文句こないな」
「挨拶の順、うまく、イロモノ性の強い人を間に挟んで、リズムつけてる」
「記念写真の移動、よっしゃ、うまく通路を確保した」
「でも、出来れば、左隅にもう一人、宣伝スタッフを置いた方が安全だけど」
ってな、コメントを口走りながら、俺も家内も心臓を高鳴らせてるわけだ。
全体に、東映、かなり力入っていたし、鮮やかな仕切りであった。
それと、司会の佐々木恭子アナ(フジ「とくダネ!」など)の進行が、抜群に上手い!
舞台挨拶終了から、記念撮影までの空白の時間帯での、間の持たせ方も堂に入っている。
ファンになってしまったよ。
これまで、こうした舞台挨拶を飽きるほど見てきたけど、もっとも驚嘆させてくれたのは、身びいきではないけど、家内が行った或る仕切りだ。
かれこれ、十数年前だったな。
幽霊ネタのコメディ映画で、主演二人が舞台挨拶に立つことになった。
主演二人は、かなりの大物の男優と女優。
一応、ここでは名は伏せておこう。
この二人、すごい犬猿の仲。
まあ、撮影中に、男と女の仲がこじれたんだな。
当時、芸能メディアでもかなり騒がれていた。
で、初日、二人とも舞台挨拶に立たなければ、それぞれの面子に関わる。
しかし、二人とも、お互い、「顔も見たくない」と。
で、板ばさみになったのが、この映画の宣伝担当だった家内である。
窮余の末、とうとう或る策をとった。
それは、
まず、舞台の右袖から、男優が登場し、舞台挨拶を行い、そして、袖に引っ込む。
次いで、反対側の左袖から、女優が登場し、舞台挨拶し、袖に戻る。
二人は並ぶこと無いわけだ。
実に奇妙な段取りだったが、これしか、方法が無かったのである。
何ともトリッキーな舞台挨拶であった。
同じ映画館の中にいながら、男優と女優は、決して顔を合わせることなく、終了した。
家内は心身ともに疲労困憊であったよ。
晩飯。祝日にかこつけて、ちょいと奮発。マグロ、モンゴウイカ、ブリの刺身で、手巻き寿司。
生のカブをネタにしたものも美味い。
他に、ヒジキと、オロシ豆腐(出し汁に醤油、味醂。大根おろし。そこに豆腐を入れて軽く煮る。ネギみじん切り)。
http://www.kurenaimon.com/mt/mt-tb.cgi/6702
