本格ミステリの傾き者、推理作家 [霞流一 探偵小説事務所]

師走。いろいろと忙しい季節だ。
そんな中、週に一度、小一時間ほどだけ、行きつけの飲み屋、「戎」北口店のカウンターでボーーと酔う。
ひとり、焼酎を傾け、何も考えない。頭を空っぽにする。
至福のひととき。
この店、火曜日か混む。
月曜が定休日。
常連さんたち、週が明けて、ブルーマンデー、月曜の会社は憂鬱だ。
なので、「戎」に行きたい。(土日は、会社休みで、おとなしく家にいるため、3日間、「戎」に行ってないことになる)
けど、月曜は定休日。
そう、それで、火曜日、待ちに待った火曜日、飢餓感も沸点に達した常連さんたちがどっと押し寄せるというわけだ。
まるで、焦らすようなプレイ、よっ、ニクいね「戎」北口店。
今宵も混んでいたよ。
いつもは座れるお気に入りのセンター寄りのカウンターまで満席。
なので、ちょいと奥の方の席で飲む。
しかも、煮込みが売り切れていた、残念。
まあ、火曜や金曜にはよくあることさね。
ともあれ、カウンターで小一時間、何も考えずに飲むだけ。
その帰り、町なかの骨董屋の前で、なかなかスパイシーな酔っ払いを見かけた。
かなり泥酔している。
骨董屋のシャッターの前で、なぜか、正座をして、酔っ払いのクセに背筋をピンッと伸ばしている。
ぐらぐら左右に揺れている。
骨董屋に何か訴えたいのか? 何か謝りたいのか?
お庄屋さんに直訴する農民を髣髴とさせた。風邪ひかないようにね。
酔っ払いって、見ていてホント面白い。
まあ、時には、他人事ではないのだが。
それゆえに、よけいに楽しめてしまうのだろう。
酔っ払いウォッチング、なかなかのエンタメだと思う。
会社員時代、深夜、銀座の泰明小学校の細い脇道で見た光景。
前のめりに倒れているスーツ姿の酔っ払い。
ズボンとパンツをおろしたまんま、尻が夜風になぶられている。
そして、股の間のアスファルトにウンコ。
脱糞した勢いで、前のめりに倒れ、そのままらしい。
そのままにしておいて、俺は黙って立ち去る。
有楽町駅。夜の十一時ごろ。
プラットホームの端で酔っ払いが前後に揺れている。危ない。
そこへ、電車が滑り込んできた。
轢かれはしなかった。
が、その酔っ払い、目の前を走る電車(停車直前だが、まだスピードがあった)に頭を思いっきし、ぶつけけた。
電車に顔面パンチを食らったわけだ。
額と鼻から血を吹いてホームにぶっ倒れた。
およそ10分後、救急隊員と担架、それに、テレビクルー一班だけ来た。
ダイヤにさほど乱れはなく、俺は普段どおり帰宅したよ。
赤羽駅のホームに酔っ払いが横たわっていた。
スーツ姿の若者が、近寄って、ポケットからチョークを取り出した。(おそらく、塾の講師か学校教師なのだろうな)
で、酔っ払いの周りのアスファルトに、チョークでその輪郭を描いた。
死体の現場のよう。夜のホームで大ウケだった。駅が和んでいた。
ワセダミステリの同期・K君が見たスパイシーな酔っ払いのシーン。
シャッターの下りた銀行の前、ひとりの酔っ払いが横たわっていた。
鼻血が出ている。
K君、どこかの居酒屋に入り、二時間くらい後、再び、その銀行前を通りかかる。
まだ、鼻血の酔っ払いは横たわっていた。
そして、すぐ脇で、別の酔っ払いがシュッシュッと言いながら、シャドーボクシングしていた。
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